平成29年度 織田信長公居館跡の発掘調査現地説明会を開催します。

今年度の発掘調査成果について、以下の通り現地説明会を開催します。

<現地説明会日程>
【公開日】 平成29年12月9日(土)
【公開時間】10時から12時まで(少雨決行)
【場所】  岐阜公園内(ロープウェイ山麓駅南側)
     ※10時より担当者による全体説明(約20分)あり
【公開当日の連絡先】
      8時30分から12時まで対応
      058-264-4480(信長公居館発掘案内所)

1.発掘調査の概要
〈所在地〉  岐阜市千畳敷(岐阜公園内)

〈調査期間〉 平成29年7月3日~平成29年12月28日(予定)

〈調査面積〉 約400㎡

〈調査場所〉 C地区南部

〈調査目的〉 7か所見つかっている山麓の庭園のうち、3つの庭園遺構について

調査区を拡張し、補足調査を行った。

 

2.発掘調査でわかったこと
◎庭園3が水の流れを伴う庭園であることを確認

○水が流れる箇所と池状にたまる箇所、地下に浸透させる箇所から構成される庭園

・H20調査時には枯山水の一部と考えられていた。

・流れには、底部に長径3~5㎝の扁平な円礫を敷く。東から西に低くなる。

・池状の溜まりには、池底に直径2~3㎝の小さな円礫を敷く。青色の石が多く、色彩も意識して敷かれたとみられる。

・オーバーフローした水は集石部分で地下浸透したと考えられる。

※流れ…庭園内につくられた小川。水源から池への導水路、または池からの排水路の機能を持つ。

 

◎庭園2と3、庭園7と6がつながっていたことを確認

○庭園2(H24に確認)から流れた水が、庭園3に注いでいた可能性が高い。

○庭園7(H28確認)から西へ伸びる溝を経由し、下段の庭園6(H27確認)へ水が流れる構造を確認。

 

調査成果のまとめ

○豪快さと繊細さが織りなす「石と水の物語」。信長公居館金箔瓦建物をめぐる庭園群の全貌解明!

 

⇒遺跡から信長公のもつ二面性が窺える。

迫力ある景観をなしているチャートの岩盤+色彩も意識した庭や弧を描く石垣など繊細な構造物

 

⇒雨水等を側溝等ではなく水路等でつないだ複数の池で受け止め、最後に地下浸透させる構造。しかし、単なる遊水池ではなく、流れや装飾的な石垣を作り、見せる庭として楽しんだ

発掘調査成果のコメント

中井均(なかいひとし) 氏 (日本城郭史)

滋賀県立大学 教授    史跡岐阜城跡整備委員会委員長

 これまでの日本城郭史において石垣や瓦、天守を伴う城郭の始祖と位置づけられていたのは安土城であった。 しかし、岐阜城信長居館の発掘はこの定説を大きく覆した。居館からは石垣が検出され、それに伴う金箔瓦も出土したのである。さらに石垣には巨石を用いるものと、人頭大の石材を積み上げるものの2種類が確認された意義は大きい。こうした技術が安土築城につながり、近世城郭を誕生させたのである。まさに岐阜城こそが近世城郭の始祖と位置づけられるのである。

仲隆裕(なかたかひろ) 氏 (日本庭園史)

   京都造形芸術大学歴史遺産学科 教授、史跡岐阜城跡整備専門委員会委員

信長居館は山麓の地形を活かし、複数のテラスを設けて意匠や機能が異なる建築・庭園が造営されていたことがこれまでの発掘調査によって判明している。今回の調査成果によって、さらに新たな園池が確認されるとともに、園池と園池が色石を敷き詰めた優美な流れの庭によって結ばれていたことがほぼ明らかとなった。このことは、庭園の配置が綿密な計画のもとで行われていたことを示している。岩盤に囲われた居館は、雨水が多く侵入する環境であっただろう。その排水を単に機能的に行うのではなく、鑑賞のための庭園として活用し、さらに水路網によって下段の園池の水源にするという技術は特に注目される。

庭園3東から

流れのある庭園(東から)

庭園3北から

流れのある庭園(北から)

庭園7北東から

弧を描く石垣と池状遺構(北東から)

庭園7北から

弧を描く石垣と池状遺構(北から)